恵比寿Manner-BOにメルシャン勝沼ワイナリーの齋藤工場長がいらっしゃいました!齋藤さんから直々にお話を伺いながらシャトーメルシャンのワインを味わうという濃密な企画。
科学的データと理論に裏付けられた経験と知識から繰り出されるお話は歴史、植物生理学、化学、農学、経済学、文化的背景と多岐に渡り、はっとすることの連続。今まで自分がいかにワインの一断面しか見ていなかったかということに気づかされ、そして新たに発見したワインの面白さにますます引き込まれていきます。


そのアカデミックな内容の濃さはまさに「齋藤教授ゼミ」!豊富な知識と経験、しかしあくまで謙虚、こんな教授がいたらきっと大学でも大人気でしょう。もし本当に教壇に立たれたらわたし絶対通います。
この世のありとあらゆるものは常に変化しており、ワインもまた時代とともに変化してゆく。大きな流れの中の一過程として、今目の前にある現象を見るということ。そして全く疑いの無いと思い込んでいる自身の味覚も、実はとてもあいまいで移り気であるということ。
ずっと地面から見ていた景色を初めて空から見たような、感覚が広がるようなお話でした。

お忙しい中山梨よりおいでくださり、このような機会を設けることに快くご協力くださいました齋藤工場長に心より感謝いたします。貴重なお話とワインの数々、本当にありがとうございました。そしてご参加くださった皆様、ありがとうございました!
さて以下は齋藤教授ゼミのレポート。内容が濃すぎてうまくまとまりませんが、思い出せる限り記録に残しておきたいと思います。
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カッコ()の中のコメントはわたしの追記です。
■葡萄の歴史
葡萄はコーカサス地方で生まれ、西へ移動するとワインとなり、東へ移動すると薬酒となる。
■甲州グリドグリ
国産ワインコンクールに出すと選外になってしまう。今あるスタンダードな甲州とは全く違うスタイルなため。
■目指すワイン像
昔は海外に迫ろう、突出した個性のあるワインを造ろうとしていた(昔のニューワールドのような)。インパクトのある、三角形のイメージのワイン。シャルドネなら樽の強いスタイル。しかし三角形のワインは驚きはあっても感動はない。感動をもたらすのは全体の調和がとれた丸いイメージのワイン。ワインの頂点は一つではなく、それぞれの地域でそれぞれの個性の頂点がある。日本は日本として、その極みを目指せばいい。
■長野を選んだ理由
良い生産地だったからというよりも、まとまった土地と、それを任せられる情熱あふれる人がいたから。結果として良い地域だった。良い風土があればよいワインが出来るのではなく、情熱ある人なくしてよいワインは生まれない。長野メルロー&シャルドネは長野オリンピックに合わせてリリースされた。
■マリコ・ヴィンヤード
長野に新たに開いた広大な畑。強い風が葡萄のうねに沿って通り抜ける。植物、たとえば雑草は踏まれると長く伸びない。葡萄も強い風を受けると大きく成長せず、小さい粒をつける。とても期待している畑。カベルネフランやシラーも植えている。
■適地
名醸地はブドウ栽培の北限にある。(フェノールと糖の成熟の推移をグラフで地域ごとに考察)。温暖な地域は糖が勝ってしまう。寒冷地はフェノールと糖が交わらない。そのフェノールと糖が交わった時に収穫するのが適熟と考える。科学的に成分分析をしなかった頃から名醸地は北限にあった。造り手は五感で葡萄の適熟を感じていたのでしょう。
■収穫のタイミング
グラフでフェノールと糖の交差点である理想的な状態で収穫できたのが2004年。適熟期を逃すと過熟になるりジャムのようなフレーバーが強くなる(ミッシェル・ローランスタイル)。よりはつらつとした果実味を得たいので、過熟より適熟でとりたい。
■温暖化
年間平均気温が一度上昇したと聞くとたいしたことが無いように思うが、積算温度で考えると年間100度~200度も多く熱を受けることになる。植物にとっては大変な変化。温暖化で葡萄に影響があるるのは昼夜の温度差がなくなること。
■日本の若手に対して
ポリシーを持ってやっていて、一足飛びに進んで行くパワーがある。いい方向にいくと思う。
■ラブルスカ系の味
ラブルスカ系のフォクシーフレイバーとはファンタグレープの香り。マルゴーのポンタリエさんに巨峰のデザートを出したら、食べなかった。しかしフランスから中学生の研修生が来た時に、ナイアガラやコンコードの葡萄ジュースを出したらおかわりもするほど飲んでくれた。ラブルスカ系の味をNGとすることは、生まれつきではなくワインを飲み込んでいく過程で生まれてくる味覚ということがわかった。
(巨峰大好き日本人は、むしろフォクシーなワインが好きかも?)
■樽について
オーク樽は樫の木ではなく柏の木に似たもの。葉も柏の葉に似ている。樫の木は常緑樹だけどオークは落葉樹。オークの木材は2,3年外に置いておき、カビが生えることによってその成分がまろやかになる。(なんと樽も醸しだったとは!!)
■醸造技術の進歩
瓶が生まれて瓶熟が出来るようになり、針金が生まれて、葡萄のうねを管理することが出来るようになった。(様々な技術の発展がワイン栽培や醸造技術を進化させていく。)
■樹齢があがると葡萄は美味しくなる?
ただ古ければよいということはない。葡萄は若いときは旺盛に自身を成長させ、実の方にエネルギーをあまりかけない。生存の危機を感じてはじめて実を残そうとする。良い実を得るにはある程度のストレスが必要。樹齢があがるとストレスによって自然に収量が抑えられるので、それで濃縮した果実ができるということなのかもしれない。
■古木
カベルネは剪定時に傷口から繁殖する病気に弱い。そのためボルドーではだいたい40年周期で植え替えを行っている。(古木や樹齢には経済的な側面も。)
■ビオワイン
ワイン造りでは醸造を科学的にとらえ微生物汚染と腐敗を克服し、コントロールする技術を積み上げてきた。その歴史に逆行することはない。良いワインは健全な葡萄から生まれる。健全な葡萄を得るためには極力農薬を使わず自然な栽培方法に限りなく近づく。ビオはあくまでも健全な葡萄を得るための手段であるべき。目的ではない。
■ワインの消費量
一人当たりの消費量を増やすよりも飲む人数を増やすほうが全体の消費量は増える。飲む人を増やすために安価のベースラインのワインは大事。(全てのワインを国産葡萄でまかなえるようになるまでは、バルクも大事。)
■ワインの飲み頃とは
果実味あふれるワインが好きな人は早めに、熟成感が好きな人は遅めに。飲み頃は人それぞれ。
■齋藤さんがお好きなワインは?
若い頃はカリフォルニアワインみたいなものが好きだった。その後ボルドー。最近はブルゴーニュもいいなと思う。いろいろ違うものを味わいたくなる。
■日本中どこでも自由にワイン造りが出来るなら、どこを選ぶ?
やっぱりマリコ・ヴィンヤード。可能性を感じる。