新潟から移動し一路小布施ワイナリーへ。曽我彰彦さんにお会いしました。
まずは畑へ。曽我さんの車に揺られ、市内に点在する畑を回ります。道中には他社の畑の前も通過。実は小布施町は様々な会社のワイン用ぶどうを供給していることに気づきます。

曽我さんは一部の畑にビオロジックと呼ばれる有機農法を実践されています。ビオロジックとそうでない畑は見比べるとその差が歴然。ビオの畑は下草がふかふか。そこにごろんと寝転がっても気持ちよさそう。
対して除草剤を使っている畑はそこだけハゲていてなんだか不自然。そして葉の色も全然違います。ビオの畑は鮮やかで透き通るようなグリーン、そうでない畑はくすんだ緑。理屈ではなく、感覚としてビオの畑のほうが心地良い。
たった数メートルしか離れていないにも関わらず、こんなに違いが出るとは驚きです。それは自然農法に切り替えた時期の違い、そしてそれぞれの畑が元々持つポテンシャルの違いだそうです。


小布施ワイナリーの畑はそれぞれ個性さまざま。一部鳥避けネットを張っている畑もあります。何故かここだけ鳥が実を食べてしまうそうなのです。そんなに畑同士は離れていないのに、どうしてここだけ?本当に不思議です。自然界には人間の目に見えない境界線があるのでしょうか?
そして話は小布施、ひいては日本の農業の姿へ。この小布施という地、土の中には巨大な岩がゴロゴロあり、水はけが良すぎて作物が実らない地だったそうです。その岩を一つ一つどけて畑を開墾した名残が畑の周りに詰まれた石垣。さらに近代に入り地中に水道管を張り巡らしスプリンクラーシステムを構築。そうして人の手を加えてりんご、巨峰の名産地となったそうです。


ところが一世を風靡したりんごと巨峰も今や底値。加えて農家さんの後継者不足、高齢化のため放棄される農地が増加。しかしスプリンクラーシステムの使用料は払わなければならず、畑を持っているだけで赤字が膨らむ悪循環に陥っているそうです。
ならば曽我さんのように畑を広げたい人に貸し出しては?と思いますが、自分の農地を他人に貸すということには私たちが想像できない様々な思いがあり、そう単純にはいかないそうです。そして畑を借りるということはその農家さんがずっと育てて来たりんごの木を伐採するということ。。。その痛みを感じながら曽我さんはりんご畑を葡萄畑へ生まれ変わらせています。


曽我さんは自社畑率100%を目指して畑を少しずつ拡張中。それは完全ドメーヌ化を目指すというごくあたりまえの目標。しかしその裏には様々なおもいがあることを感じます。
契約農家さんと一緒にやっていくということは、将来経営方針が変わった際には彼らを切らなければならない時が来るかもしれない。そんな無責任なことは、出来ない。ワイナリーという事業に携わる、ありとあらゆる人のことまでを考え、一人それを背負い、畑に向かう。そんな曽我さんの姿を垣間見た訪問でした。
そしてお会いして確信したことは、彼のワインには一点の曇りもないということ。
「自分の葡萄にまだ自信が無いんですよ。」とおっしゃる曽我さん。それはすなわち常に変化しているということ。各ビンテージのワインには、彼がその年一年間ぶどうとワインに込めた思いが詰まっています。


顔の見えるワインは、その造り手の姿を鏡のように映します。2004年はマロングラッセの香りが満載だったシャルドネも、思うところあって2006年はだいぶスタイルが変わっているそうです。そのお話を伺い2006シャルドネLe Vin Naturelを購入。曽我さんがどんな気持ちでこの年を過ごしたのか、小布施に思いを馳せながら味わってみたいと思っています。
曽我さんとのお話はかなり濃い内容で、ここに書ききれないことも沢山あります。考えさせられることが多く、この日の夜は温泉で瞑想しすぎて湯あたりしてしまうほどでした。
またお会いして、いろんな思いを伺ってみたい。曽我さん、お盆でお休みのところ本当にありがとうございました!